建設業の事業承継制度がスタート

令和2年10月1日から事前の認可を受けることで、建設業許可の事業承継が可能になりました。これまでは事業承継は認められておらず、いったん廃業して新規で建設業許可を受けなければなりませんでした。新規で許可を受けるためには自治体によって1ヶ月~3ヶ月程度の審査期間があり、その審査期間中は無許可となってしまうため、大きな工事の受注ができないという弊害がありました。こうしたデメリットをなくしていくため、事業承継制度が開始されたのです。

事業承継が認められるようになった背景

無許可期間が生じてしまうということの他にも、事業承継がスタートした背景があるように思えます。それは建設業会の高齢化と人材不足です。

建設業許可業者数の推移

国土交通省が出している「建設業許可業者数調査の結果について」という資料によると、令和4年3月31日現在、建設業許可業者の数は約47万社となっています。ピークだった平成12年には69万社ほどだったので、20%程度減少しております。ここ数年はほぼ横ばい状態で推移していますが、今後、大きく増加していくとは考えにくい状況となっています。

また、就業者数で見てみると、55歳以上が36%、29歳以下が12%となっており、高齢化が進んでいます。また、経営者についても高齢化が進んでいるのですが、ある調査によると、70%以上の建設業者が後継者がいない状況という結果が出ているとのことでした。

高齢化と人材不足が進むとどうなるか

建設業は技術承継をしていくことで新たな工法が生まれたり、効率化が進んだりということが起こります。高齢化が進み、技術の承継が途切れてしまうと、技術力の低下に繋がってしまいます。

高齢化が進み、後継者がいない中、会社が解散してしまったりすると、そこにあった技術力が失われてしまったり、従業員がバラバラになってしまうことで組織として培われてきた技術者や技能者の連携などがなくなってしまうことなども考えられます。

建設業の事業承継は、建設業法により「建設業のすべてを承継する」と定められています。設備や従業員も含まれるものと解されているので、事業を承継することで雇用や技術についても守って行くことに繋がります。事業承継制度のスタートした背景にはこうした理由もあるものと思っております。

建設業許可の事業承継の形態

建設業許可の事業承継では事業譲渡、合併、分割が認めらています。

事業譲渡

事業譲渡では、法人成り、個人事業の世襲、事業売却が想定されます。法人成りは個人事業主が新たな法人を設立するケースです。個人事業主の世襲は個人事業主が子供や親族に事業を譲ることです。事業売却は建設業の事業を他社に売却することです。

合併

合併では、吸収合併、新設合併が想定されています。被承継会社は消滅することになります。吸収合併は被承継会社を承継会社が吸収します。新設合併は新たに会社を設立して、2社以上の会社が合併する場合です。

分割

分割では、吸収分割、新設分割が想定されています。分割はある会社の建設業部門を部門ごと吸収することです。新設分割は新たに会社を設立してその会社に建設業部門を分割する場合となります。

令和3年度の事業承継の実施数

事業承継がスタートした翌年の令和3年度の実績では事業譲渡947件、合併58件、分割41件、相続81件で合計1,127件の事業承継が実施されました。事業譲渡が多かったのは法人成りが多かったものと想像できます。合併・分割はまだまだ数が少ないですが、今後、どのように活用されるのか注目していきたいと思っています。

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