常勤している取締役が建設業の経営経験が5年以上あれば、常勤役員等(経管)の要件を満たすことができますが、取締役の任期が短かったり、入れ替えが激しい会社であると、5年以上の経営経験を証明することが難しいというケースもあると思います。そこで建設業法では執行役員でも常勤役員等(経管)になることができると定められているのですが、「実際は認められにくい」とか、「役所が受け付けない」といった声を聴くことがあります。
では、執行役員を常勤役員等(経管)で申請する際、どういうケースなら認められるのでしょうか。要件や必要書類などを解説していこうと思います。
執行役員を常勤役員等(経管)にする場合の確認資料
取締役会設置会社であることの確認
執行役員が常勤役員等(経管)になる場合、会社が取締役会設置会でなければならず、その確認のための資料を提出します。なぜ取締役会設置会社でなければならないのでしょうか?その理由についてもお伝えします。
まず、執行役員がどういう立場の人かというのを確認しておきましょう。
執行役員は、経営の執行を担当する立場の人で、取締役会の方針に従い、具体的な業務の執行を行い、事業部門のトップや本部長として、会社の運営に深く関与する職制となります。
つまり、取締役会で任命されて、取締役会で決められた方向に会社を導いていく各部門のトップとなるような方が該当します。
取締役会で任命されるので、執行役員制度がある会社はと取締役会の設置会社でなければなりません。そうでなければ執行役員を任命できないからです。そこで建設業許可申請で執行役員を常勤役員等(経管)にするのであれば、会社に取締役会があることが必須となるため、取締役会を設置していることを証明しなければならないのです。
取締役会の設置会社かどうかは会社の謄本で確認ができるので、会社の履歴事項全部証明で取締役会設置会社であることを証明します。
組織図で職位を確認する
執行役員で常勤役員等(経管)の要件を満たす場合、執行役員なら何でもいいわけではありません。取締役に準じる地位である必要があります。それを組織図で確認します。
組織図には各部門が記載されており、その部門のトップに常勤役員等(経管)として申請する執行役員が就任している必要があります。どの部門のトップでもいいわけではなく、建設事業を統括する部門のトップでなければなりません。
組織図上を提出することで、常勤役員等(経管)になる執行役員が、取締役の直下の職制で、建設事業部門を統括する責任者である執行役員であることを証明します。
取締役会の議事録で建設部門に対する権限を確認
すでにお伝えしているとおりですが、執行役員は取締役会で任命されます。取締役会は議事録を残しますので、その議事録で執行役員に就任したことを確認します。また、執行役員としてどのような権限が委譲されたのかも確認をします。
具体的には、執行役員として建設事業部門全般の業務執行権限が委譲されているかどうかを確認します。
取締役会議事録で建設事業全般の業務執行権限が委譲されていることが確認できないような場合には、定款や執行役員規程、執行役員業務分掌規程、取締役会規則、取締役就業規則等で補完をする必要があります。
業務分掌規程で建設部門であることを確認
執行役員が常勤役員等(経管)になる場合、取締役に次ぐ職位であり、建設業全般を統括する部門の責任者である執行役員でなければなりません。そこで統括する部門が建設部門の全般を統括していることを証明するために業務分掌規程を提出します。
業務分掌規程は会社の各部門がどのような業務を行うかを規定しているものですので、執行役員が統括する部門が建設業全般を統括する部門であるかどうかを確認します。
業務分掌規定では、他の部門がどのような業務を統括している課の確認もします。その結果、執行役員が統括する部門以外にも建設工事を担当する部門があったり、統括する部門が資材調達のみであったり、営業の一部のみであったりする場合は、申請が認められないことがあります。あくまで、建設業全般を統括する部門の執行役員なければなりません。
人事発令書で執行役員等の期間を確認
人事発令書は過去の期間において執行役員で経営経験を証明する場合に必要になります。常勤役員等(経管)の要件を満たすには、5年以上の経営経験が必要になりますが、執行役員での経験の場合は、履歴事項全部証明などでの証明ができません。
そこで、会社が発行している人事発令書で5年以上の期間があるかどうかを確認します。
過去経験が取締役か執行役員かでの違いについて
執行役員が常勤役員等(経管)に就任する場合、過去の経営経験と、現在執行役員であることを証明します。過去の経営経験も現在執行役員であることも、上記に記載の書類で証明ができるのですが、過去の経験によっては、証明に必要な確認資料や証明する期間が異なるケースがでてきます。
パターンとして以下の二つをしっかり切り分けしておきましょう。
- 過去の経営経験を積んだ期間が取締役であり、常勤役員等(経管)に就任する際の職位が執行役員の場合
- 過去の経営経験を積んだ期間が執行役員であり、常勤役員等(経管)に就任する際の職位も執行役員の場合
1のケースは、別の会社で取締役をしており常勤役員等(経管)としての経験があり、申請会社に執行役員として迎え入れられたようなケースであったり、現状は取締役が常勤役員等(経管)をしているが、その取締役が取締役あから外れて執行役員になる場合を想定しています。2のケースは執行役員がそのまま常勤役員等(経管)になる場合や、執行役員が取締役に就任して常勤役員等(経管)になる場合を想定しています。
ポイントになるのは、過去の経営経験を積んだ期間が取締役であったか、執行役員であったかです。いずれの場合でも要件を満たしていれば、常勤役員等(経管)に就任できますが、用意する書類などが若干異なってきます。
過去経験が取締役の場合は、過去の経験については取締役が常勤役員等(経管)になる場合の確認資料を揃えて、現在の立場については上記の書類を準備します。
過去の経営経験を積んだ期間も現在も執行役員の場合は、その期間分について上記の資料で確認を取ります。例えば、謄本では5年以上前から取締役会設置会社であることが確認できなければなりませんし、業務分掌規程に改正がある場合は、古い業務分掌規定も必要になります。人事発令書も5年分以上は必要になります。
執行役員での経験は証明が難しいかどうか?
以前は執行役員が常勤役員等(経管)になるのはかなり難しい申請でした。役所ごとに求められるものが異なっていたりもしましたし、取り付く島もない対応をされることも多くありました。ただ、現在は要件の証明に必要な書類が明確化されており、上記で紹介した書類が揃っていれば、受付されます。
それぞれの書類等が何を証明するためのものなのかをしっかり理解した上で準備を進めていくと万全だと思います。
また、将来、執行役員で常勤役員等(経管)を考えていくという会社さんについては、上記の書類をきちんと用意しながら5年スパンくらいで考えていくのがいいのではないかと思います。