令和6年(2024年)6月14日に公布された「改正建設業法および入札契約適正化法」は、2025年12月までに全面施行されることが決まっています。

この改正は、建設業界全体の「働く環境」と「取引の適正化」を大きく変える内容であり、許可の新規・更新を行う事業者の皆さまにも直接関係する重要な法改正です。

改正の背景

建設業界では、長年にわたり次のような課題が指摘されてきました。

  • 技能者の高齢化と若手人材の不足
  • 賃金・労働条件が他業種より低水準
  • 資材価格や人件費の上昇を十分に転嫁できない
  • 長時間労働・短工期など過酷な現場環境

こうした状況を是正するため、国は「担い手三法(建設業法・入契法・品確法)」を同時に見直し、「適正な価格・適正な工期・適正な処遇」を確保する仕組みを整えました。

段階的な施行スケジュール

施行時期 主な内容
令和6年9月1日 処遇改善・労務費反映などの規定を先行施行
令和6年12月13日 資材高騰への対応、契約変更ルールの導入
令和7年12月(予定) 全改正項目が施行(働き方改革・ICT活用など)

全面施行の時期は令和7年12月(2025年12月)が目安です。
この時点で改正内容がすべて適用され、違反には指導・勧告・公表といった措置も取られる可能性があります。

改正の4つの柱

(1)労務費の適正化・処遇改善

国が「労務費の基準(標準労務費)」を定め、見積や契約の際にはこれを参考にする仕組みが導入されます。

  • 技能・経験に応じた賃金の確保が努力義務化
  • 「著しく低い見積り」や「原価割れ契約」の禁止
  • 施工体制台帳に処遇状況(社会保険加入等)の記載義務化

技能者の処遇を見える化し、安定的に働ける環境づくりを促す内容です。これにより、見積書や契約書の様式変更が求められる可能性があります。

(2)資材価格の高騰への対応と価格転嫁

近年の資材高騰に対応するため、「契約変更」や「価格協議」のルールが法律上明確化されました。

  • 契約書に「価格変動時の対応方法」を記載
  • 資材価格の上昇が見込まれる場合、「おそれ情報」を通知
  • 発注者と受注者の協議義務化、交渉拒否の禁止

今後は「発注者が交渉を拒否する」「一方的に値下げする」といった行為が制限されます。下請・元請のいずれも、適正な価格転嫁を行う体制整備が必要です。

(3)働き方改革・生産性向上

改正法では、無理な工期設定の是正やICT活用が明記されました。

  • 工期ダンピング(極端に短い工期設定)の禁止
  • 現場技術者の専任義務の合理化
  • ICT活用(電子契約・遠隔臨場等)の努力義務化

現場のデジタル化・効率化が今後ますます求められます。行政書士としても、電子契約やクラウド管理の導入支援が可能です。

(4)契約・取引ルールの明確化

見積書・契約書の内容にも大きな変更が生じます。

  • 見積書への労務費・材料費等の明細記載義務化
  • 契約書に変更協議・再契約手続きの記載義務化
  • 発注者による一方的な減額・条件変更の禁止

契約トラブルを未然に防ぐため、「見積 → 契約 →変更契約」の流れを法令に即して整理しておくことが重要です。

建設業者が今から準備すべきポイント

① 書式の見直し

改正後に備えて、見積書・契約書・施工体制台帳の書式を点検しましょう。特に「価格変更条項」や「処遇記載欄」が旧様式のままだと、運用に支障をきたすおそれがあります。

② 社内フローの整備

見積から契約、協議、請求までの流れを明確にし、労務費・資材費が適正に反映されているかを確認できる体制を整える必要があります。

③ 取引先との共有

元請・下請の双方が改正内容を理解していないと、不当な契約や協議拒否などトラブルにつながる可能性があります。取引先への説明や情報共有を早めに進めておきましょう。

④ 電子化・ICT化への対応

今後は「書面」よりも「データ」が標準になります。電子契約・クラウド台帳・デジタル見積書への移行も検討しておくと安心です。

まとめ

  • 改正建設業法は2025年12月に全面施行予定
  • 「労務費の適正化」「価格転嫁」「働き方改革」「ICT活用」が4本柱
  • 見積・契約・工期などのルールが厳格化される
  • 書式と体制の整備を早めに行うことが重要


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