建設業を始めるにあたって、「まずは実績をつくってから許可を取ろう」と考える方も少なくありません。しかし、建設業許可を取得する前に500万円以上の工事を請け負って施工することは、法律で禁止されています。この点を誤解したまま工事を行ってしまうと、思わぬトラブルや行政処分につながることがあります。
ここでは、建設業法の基本的なルールと、実際に起こり得るリスクについて解説して、東京都の運用(令和7年6月~)についてもお伝えします。
建設業許可が必要になる金額の基準
建設業法第3条では、「請負金額が500万円(消費税込み)以上の建設工事を請け負う場合」には、建設業許可が必要と定められています。
この「500万円」には、材料費や設計費なども含まれます。つまり、たとえ人件費が少なくても、工事一式の請負額が500万円を超える場合は必ず許可が必要です。
また、建築一式工事については別の基準(1,500万円以上、または延べ面積150㎡以上の木造住宅)がありますが、原則として500万円がひとつの目安です。
無許可で500万円以上の工事を行うとどうなる?
無許可で許可が必要な工事を請け負った場合、建設業法第3条違反となり、以下のような罰則があります。すぐに適用されるというケースは少ないと思いますが、法令でどのように定めれられているかをお伝えします。
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【刑事罰】3年以下の懲役または300万円以下の罰金
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【法人の場合】1億円以下の罰金(両罰規定)
また、過去に無許可で工事を行っていたことが判明すると、その後の許可申請にも大きく影響します。具体的には、次のような扱いになります。
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「法令違反歴」として行政庁の審査で問題視される
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「誠実性が欠ける」と判断され、許可が下りない場合がある
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元請・発注者との信頼関係を損ない、契約トラブルにつながる
特に、公共工事や大手元請との取引を目指している場合、この点は非常に重要です。
「まだ契約前」「材料だけ手配した」もアウトの可能性
「契約書はまだ」「工事を始めただけ」といった言い訳も通用しません。実際に「請負契約を結んだ」「見積金額が500万円を超える」「実質的に施工した」と判断されれば、契約の有無に関係なく違反とされる可能性があります。
また、「分割して請け負えば500万円未満になる」という形も、実態がひとつの工事であれば通算されるため注意が必要です。
令和7年6月以降の東京都での取り扱い
東京都では新規の許可申請などの際に500万円以上の工事の施工が認められた場合は、建設業法第3条違反を適用するのではなく、申請窓口で口頭指導という対応を取っていました。また、2,000万円以上の施工が発覚した場合は役員を呼び出して口頭指導としていました。
しかし令和7年6月1日に「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」が改正されたことに合わせて運用が変わりました。500万円以上の工事を施工していることが発覚した場合で悪質だと判断され場合は、聴聞などを経て、3日~4日の営業停止となることがあります。1件の違反が認められた場合は3日、複数の違反が認められた場合は4日となるようです。
新規申請や業種追加申請の際の経営経験や実務経験を確認するための資料や工事経歴書に500万円以上の工事が出てきた場合に違反があったかどうかが調査されます。
申請自体は通常通りに受付され、許可が出るまでの標準処理期間などに影響はありません。ただし、同時に建設業法違反での調査が進み、違反していることが確定した時点で営業停止処分が出るとのことです。
令和7年10月の段階で2社営業停止処分を受けているようです。